SAS──Special Ability Secret allied
force──第四章・2
「ほな、後は任せるわ。もうすぐここに迎えが来るって言われとるから」
「うん、宿はあとでIDカプセルから連絡するわ。また後で」
港に迎えが来るという遊井を残し、一行は街の中へ
向かうこととした。さすが海に面した土地だけあり、道には
軒を連ねて沢山の店が並んでいる。その分人も多い。
案外早く宿が見つかりそうだが、宿を決めるならできるだけ
目立たなくて郊外にあるほうが都合が良い。
市場に軒並みを連ねている果物や南国名物を見ながら
一行は郊外へと向かった。
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「古春特別指導官、お待ちしておりました」
張りのある大きな声で、ここでの特別な称号を
付けられて敬礼をされると、同じ軍でもあそことの違いを
大きく感じさせられてしまう。
内部の雰囲気も、どこかゆったりとしていて
間取りの広いSAS機関とは違い、天井は低くその中で歩いている
人たちの身長はみな高いのだから、余計に圧迫感がある。
真昼の外と比べてば中はとても暗いように感じる。
「まず初めに憲兵たちの演習風景を見せてもらいますわ」
「はっ。では、こちらになります」
査閲に来た遊井は、どうどうたる歩きですれ違う軍人たちの敬礼を見送る。
緊迫した雰囲気の流れるところは自身の棲み慣れた部署を思い出させ、
筋肉のついた逞しい体が軍の厳しい訓練を連想させた。
「あいつら上手くやってるやろか」
「はい?何かおっしゃいましたか?」
「あ、いや。独り言ですから気にせんで下さい」
ブロンドを後ろへ流しているやや長身の男は自身の後ろを
歩いている小さな少女を肩越しに振り返り、不審そうな顔をする。
それに対し曖昧な返事を返し、男が前へ向き直るとまた神妙な
顔つきになった。
六陣たちのことを考えるとどうにも不安だ。今日は周辺の調査だけで
深入りはしないとはいっていたが心配なのはそちらの方ではなく、
研究所にいたという連中のことだ。あのモルモットを狙ったのだというのなら
既にこの島へも嗅ぎまわり、遺跡の場所もつきとめているかもしれない。
いや、戦意を向けていなかったということは、彼らには
こちらの想像がつかない能力を秘めていることも考えなければ
ならない。こちらを恐れなかったということは、少なくとも
あちらはこちらの手の内を既に把握していることになる。
そして、何か策を持っているのだ、こちらに対抗する。
エアハルト=クレイの謎を解明しようと躍起になる研究者なら沢山
いるが、どれもろくな連中ではないことは知っている。もしも当時の
遺跡なそこから出土された調度品が目当てならば可愛い方であるが、
それだけで済むような連中ではないからこそ戦に向いた自身が選ばれた
ことも理解している。
これは罠だ。
そう自身の六感が騒いでいる。こちらはあのモルモットを連れているのだ。
もしも我々が目的地にたどり着き、それが彼らに監視されているならば、
彼らにとってはモルモットの回収とエアハルト=クレイの謎を解明するという
一石二鳥になる。それを暗示するものなのか、彼らの音沙汰はあれ以来
一切SAS機関から報告されない。
「到着いたしました!」
「ご苦労」
それだけいうと、ドアを開けてくれた軍人に礼をしてそこをくぐる。
偉い態度をとれるのは、自分の位がここでの尉官と佐官の間に位置するからだ。
こういう態度をとるのも、嫌いではない。演習中だった憲兵たちは
突然現れた(軍服を借りて着ているが)場にそぐわない少女に目を大きくし、
隣の者に何かを言われると、突然焦り真面目に訓練に戻ろうとする。
他者からみても、自分たちの存在はかなり異様なものに映るだろう。
なんせ、自分のようにみるからに戦場向きではない小娘が一般の軍よりも
壮大な力を秘めているのだ。
いくらその態度には馴れていても、独特のむず痒さは感じてしまう。
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