SAS──Special Ability Secret allied force──第二章・2

 

 

 

 

 

──飛虎のSAS機関への入隊試験がこれより行われる。

 

 六陣はその緊張している気持ちをなんとか落ち着かせ、重い扉を開けた。

 

 

「特殊部隊班、速報部第一部署所属第六等級、酒星。SAS機関入隊候補の

 少女を連れてまいりました」

 

OK、そこに座って良いよ」

 

 正式な挨拶をしていざ入ったら、目の前にいたのは若い男だった。

20代前半の若々しい表情ではあるが、着ている制服は部署長の指定制服。

顔に見覚えはないにしろ、それなりの権力を持った者であることに間違いはない。

 だが、あまりの気軽い返事に拍子抜けしてしまった。

 

「失礼します」

 

 そう言いながら座り、おどおどしている飛虎にも目配せをして座らせる。

 

「さて、じゃあいきなりだけど能力をここで見せてもらおうかな」

 

 手元の資料を開きながら試験管が言う。

飛虎は困っている。それもそのはず、この狭い部屋の中に植物はない。

 

「試験管、申し訳ございませんが、彼女は植物を操る能力者です。

 媒介となるものがないと能力を発揮できません」

 

 六陣が言う。それを聞き試験管はうーんと少し考えるような

そぶりを見せたあと、しょうがないか、と呟いた。

 

「本当は能力を見せてもらってからこいつを使うんだけど

 そうなってはしょうがないからね……一丸(ひとまる)、頼むよ」

 

 そう言うと彼の傍に伏せていた犬に似た形をした妖獣

一丸は飛虎のそばへと歩み寄った。近くへ寄ると座っている飛虎の

膝に前足をかけて顔を飛虎の目の前へ突きだす。

 

『ムスメ、動くなよ』

 

「!!」

 

 黒く大きな身体、その背中には一筋の銀。そしてその妖獣の

宝石のように輝く金色の瞳はまっすぐと飛虎を見つめ、ゆっくりと目を閉じた。

 突然喋った奇妙な生き物にびっくりした飛虎だったが、獣が目を閉じると

同時にまるでその瞳に引き込まれたかのように彼女も目を閉じた。

 

 

 

 

+++++++++++++++

 

 

 

 

 次に飛虎が見たのは真っ白な空間。

目の前には先ほどの大きな獣、一丸がいた。

 

「……ここは?」

 

『私の創り上げているコミューンの中だ。今からお前には

 私の中に残されている記憶を見てもらう』

 

 腰を降ろしお座りの状態をしていた一丸は

その場に伏せた。すると、そこから波紋が広がるようにして

景色が変わってゆき、古い本の中に出てくるような絵が

浮かび上がった。

 

『遥か昔、神の手によって、ひとつの星が創られました

 その星へ辿り着いた妖精達は、新しく生まれ変わった星で

 新たな生命を育みました

 その中には、天使もまざっておりました

 彼等は、神へ、誓ったのです

 この星で、新たな歴史を築き、二度と過ちを起こさぬと

 

 時は流れ、星が生まれてから数十万年経ったころ

 天使は背中に生えていた翼をむしり取り、地に足を付けました

 そこは妖精達の育んだ、とても豊かな土地でした

 生命溢れ、緑は踊り、天は恵みをもたらしました

 

 そんな中、土の中で眠っていた、恐ろしい獣が目を覚ましました

 

 地は荒れ、水は干乾び、生命が絶えました

 過去に起きた歴史が、再び繰り返そうとしていました

 地の者たちは、神に乞いました

 どうか我等に、彼等に打ち勝つ力を与えて下さい

 我等の起こした罪と同じ事を、今、繰り返されようとしている

 

 神はその言葉を受け、その者達に、ある力を与えました

 

 それは大いなる力、神のみが操るとされる力のひとつ

 その力を手に入れて、彼らは獣と戦いました

 しかし、彼らの力だけでは獣を倒せませんでした

 途方にくれていた時、天から天使が舞い降りてきました

 翼をもぎ取らずに天に残っていたものたちです

 彼等はずっと天にいるうちに、ある特殊な力を備えていました

 身体の内から開発された、天才的な能力です

 ふたつの種族で力を合わせ、なんとか獣を再び地へと

 戻すことができましたが、すべての力を使い果たした彼等は

 深い眠りへと、落ちていってしまいました

 彼等の話は受け継げられてきましたが、いつのまにか

 世界から消えうせ、皆が彼らの存在を忘れてしまいました

 

 彼らもまた、己の力を発揮することなく、永遠の眠りの

 中に葬り、自らもそれを忘れようとしました。

 

 そして今、彼等の力は再び眠りから解放され

 新たな扉が開きました

 それはまるで、何かの訪れに目が覚めたかのように

 意思を持って、目覚めました

 

 

 

 

 

 

 

 

 扉の獣よ、我、時の守護は、この者を

 天の者と、正式に認めました』

 

 

 

『そうか………ではムスメよ、汝を

 エゼルの正式な所持者と認め、SASへの入籍を許す

 汝、我等と契約を結び、SASに尽くすことを誓うか?』

 

 

 先ほどまで視界いっぱいに広がっていた話の世界は一瞬にして終わり

また始めの真っ白な世界へと戻された。伏せていた獣、一丸は身体を起こしている。

 

「契約とは…なんですか?」

 

『我等と契約することによって、今まで封印されていた残りの力の

 扉を開く。しかしその代わり、もしもお前がSASを裏切れば

すべての力をお前から奪いとり、新たな後継者へと引き継いでゆく。

もう一度問う。汝、我等と契約を結び、SASに尽くすことを誓うか?』

 

  獣が話し終えると、飛虎は一度目を閉じ、開けた。

 

「誓います」

 

『では、お主に天の者の能力、エゼルの証を授ける』

 

 

 

 

 

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「一丸、終わったみたいだね」

 

『あぁ……』

 

 飛虎が目をあけると、そこはさっきと同じ試験管室だった。

膝に前足を置いていた一丸はもとの位置へと戻って行きながら

試験管と言葉を交わす。

 隣をみると、先ほどと同じ体制で六陣が椅子に腰掛けていた。

 

 

『ムスメはエゼルの能力所持者として正式に認められた』

 

「おめでとう、君は合格だよ」

 

 

 

 

 

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